愛犬のメリーと出会ったのは、私が5歳の頃。兄の進学のお祝いとして、新しい家族が増えた。メリーは小さな茶柴の女の子で、元気に庭を駆け回っていた。リビングの大窓を開けると、メリーが上がれる岩があって、岩に座ったメリーの隣に並んで写真を撮ったこともある。もふもふの毛玉みたいなメリーが大好きだった私はメリーと遊ぶのが楽しくて仕方がなかった。母親や兄が散歩に行くときは必ず付いていき、一緒にリードを引かせてもらった。メリーが大きくなって、私が小学生に上がったころ、私は散歩についていくのではなく、ひとりで散歩に行きたかった。
メリーは賢い犬だったし、自分の言うこともよく聞いたから、身体の小さい自分でも散歩ができるんじゃないかと思ったのがきっかけだった。母親に許可をもらって初めて自分一人で散歩に行った日、私は嬉しくて、いつも行く公園ではなく、自分が友達とよく行く近くの河原にメリーを連れて行った。最初は初めての場所に嬉しそうに尻尾を振るメリーの姿に私も嬉しくて、意気揚々と歩いていた。でも、テンションが上がったメリーが走り出した瞬間、リードか私の手から離れ、メリーは私の元から走り去ってしまった。当時の私は小学生の中でも1、2を争うくらいに足が遅かったから、全然追いつかなくて、泣きながら走ってメリーを追いかけた。メリーは遊んでいると思っていたのか、とても楽しそうに走って逃げていたけれど、追っかけている私は泣きながらメリーの名前を叫び走っていた。私が転けて、追いかけられなくなったときに、メリーは寄ってきてくれて、なんとかメリーと家に買えることができたが、ボロボロの私と草だらけのメリーを見た母親はとても困惑していた。
そこから12年経って、メリーはおばあちゃんになって、まっすぐ歩くのも難しくなった。散歩も長く歩くのはできなくなっていて、長い間あの河原にも行ってなかった。お家の中で寝ている時間が増えて、介護が必要になっていた。それでもメリーは私と一緒にいてくれた。受験生だった私は勉強の間にメリーの介護をした。試験日が近づいてきたある日、メリーが珍しく散歩の催促をしてきた。いつもより軽快に歩くメリーが私の持つリードを引っ張って向かったのは、私が初めての散歩で行った河原だった。メリーが笑って嬉しそうにしていた顔は、過去のあの日と同じで私は受験で張り詰めた心が温かくなって、河原で泣いてしまいました。その2日後、メリーは天国に行ってしまったけれど、最後まで優しく私に寄り添ってくれて、今でも大好きな愛犬です。